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2012年8月から1年間ドイツ留学を始めた大学院生、朝倉優佳さんによる
ドイツレポートが届きました!
留学を考えている人の参考になればと思います。

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ドイツ留学について

 留学先のドイツ・ニュルンベルクに住み始めてから早くも半年が経ちました。
こちらで生活するようになるまでの経緯とここでの生活について述べていこうと思います。

1、留学までの経緯
 ドイツに留学したいなとのんびり考えていたのは学部4年の秋頃だったと思います。しかし私の元にはドイツの大学についての情報はおろか、ドイツでの生活がどのようなものなのか全く知識がなかったので困っていました。そこで相談に乗ってもらったのがドイツに留学経験のある友人でした。そしてその友人から更に紹介して頂き、徐々に情報を得て行きました。当初は「行けたらいいな」くらいに考えていた私でしたが、いろんな人に「ドイツに行きたい」と伝えているうちに自然と自分自身も実感がわいてきて「行きます」という気持ちになっていました。自分だけで考えて迷っているより、人に自分のしたい事や望んでいることをどんどん伝えていった方が得るためのきっかけを作ることが多く、実現に近くなるような気がします。「瓢簞から駒」ではありませんが、言ったもん勝ちというかんじがしました。
 留学先を決めるには、まず大学の教授とコンタクトを取り、留学の受け入れ可能だと返信をくれる教授を見つけるのが一番早いと聞いたので自身の自己紹介と作品についてまとめたファイルなどを送ろうと試みましたが、メールをつくるまでも一苦労でした。大学のホームページで教授の連絡先を探すにしてもメールをつくるにしても全てドイツ語が必要だからです。大学のホームページは英語で書いてあるところもありますが、それでも大変です。そしてメールの作り方ももちろん知らないので知人や通い始めた語学学校の先生に質問していました。そして返信を頂いた教授とのやり取りを続けて行き、直接会ってお話しをする機会をつくりました。
 ドイツの大学とコンタクトを取り始めてから約半年後、教授らと面接するためにドイツへ向かいました。実際に現地へ向かうのは様々な結果に結びつきました。直接大学や学生の様子を見ることが出来ましたし、ドイツの教授も私に直接会うことで信用を得られたと思います。そこで私は留学許可を得、日本へ帰国しました。それから留学までの約1年間は制作と語学の学習との両立に奮闘しました。
 ところでなぜドイツだったのかというと、大学に入る以前から取り組んで来たアートイベントや芸術祭のボランティアを通してドイツ人の作家やドイツに滞在経験のある人と出会う機会があったのが大きい理由だと思います。もちろんドイツ美術が最初の理由でしたが、留学とは制作だけではなくその地の人と接し、生活していくことなのでその国を知っておくことは私にとって大切なことでした。

2、ドイツでの生活 −語学について−
 ドイツで生活を始めたのは昨年の8月から。初めの1ヶ月は語学学校に通うためにフライブルクというスイスとの国境に近い街にいました。語学を習うということはもちろん厳しく大変なことですが語学学校では様々な国籍、年齢、目的を持った人々と出会うことが出来、それは日本にいるだけでは得られない経験でした。それはニュルンベルクに移ってからも同様で、様々な国籍の留学生と友人になることが出来ました。人と出会うということは自分の在り方を見つめることでもあると強く感じました。これは海外に住むことの利点でもあり、辛いことでもありました。私は今まで自身のコミュニケーションの取り方を考えたり悩むことはありませんでしたが(日本人同士だからあたり前といえばあたり前かもしれません)、初めてわからなくなったのです。それは私の語学能力の問題が大きいのですが、自身の表現の仕方がそもそも日本人と海外の人とは大きく違うと痛感しました。日本人はどこか多くの言葉を使わなくても通じ合えると思っているところがあるのではないでしょうか。それが外国では全く通じないのです。日本人が普段話す量を100%とすると海外では200%くらい話すつもりではないと相手はなかなか理解してくれません。今まで少しの表現で足りていると思っていたことが突然それ以上の表現でしかも外国語での会話が必要になったのは大きい変化でした。さらに、ここではほとんど日本語と接する機会がなく母国語を見ない、聞かない、話さないことは予想以上にストレスでした。外国語で話すことは容易なことではなく、話さないと誰も自分のことを理解してくれない。八方塞がりの様な気持ちにもなりました。しかし、数ヶ月後ここでの生活に慣れてくると同時に自然と苦にならなくなっていきました。そして少しずつでもドイツ語でやっていこうとしていると周囲の人は温かく見てくれます。先日もドイツ語での作品紹介のプレゼンを授業内でおこないました。教授やクラスメイトはよく耳を傾けてくれ、私が伝えたかったことを理解してくれたようです。半年住んだ今でも私のドイツ語の能力はまだまだ十分ではありませんが、語学によって辛くなることはほとんどありません。それは語学に慣れてきたのと同時に人とコミュニケーションを取ることの楽しさと嬉しさを経験できたからです。
 表現について考える機会を得たことはコミュニケーションを考えるだけではなく、制作についてももちろん大きな影響がありました。自分の在り方について根本から見直し考えさせられる、このような経験が出来るのは海外に住み様々な人と接することができたからでしょう。

3、ドイツでの生活 −ニュルンベルクについて−
 現在住んでいるニュルンベルクについて少しご紹介します。ニュルンベルクはドイツの東南に位置する街で、バイエルン州の中ではミュンヘンに次いで二番目に大きい街です。中心街は昔の城下町で、丘の上にはお城があります。お城からの眺めはどの季節も素晴らしいです。ニュルンベルクで最も知られているのはクリスマスマーケットかもしれません。ドイツでは最大の規模で、街の中心にある広場で行われます。クリスマスのシーズンは街中に屋台や音楽、馬車などとても賑やかで観光客も多く見られます。普段は静かでとても過ごしやすい街です。ニュルンベルクは作家アルブレヒト・デューラーが住んでいたことでも有名です。デューラーの住居は博物館として街に残っています。昨年は美術館で大々的なデューラーの回顧展も開かれ、私も訪れることができました。ニュルンベルクは大きい街ではありませんが、近年中央駅近くに新しい美術館もでき、とても充実した街です。

4、ドイツでの生活 –授業について−
 私が現在所属している大学はフリードリッヒ・アレクサンダー大学といいます。とても大きい規模の総合大学で街中、隣町のあちこちにキャンパスが在ります。ヨーロッパを中心に多くの留学生が勉強しています。留学生を受け入れる体制も整っており、オリエンテーションや在学生による街のガイド、留学生同士の交流会や旅行等、プログラムの充実に驚きました。
 美術学部は中心街からトラムで15分程のところに校舎があります。
こちらの授業は女子美と同じ様にペインティング、ヌードデッサン、版画、彫刻、美術史などの授業がありますが、内容は少し異なります。一番違いに驚いたのは実技の授業でも必ずと言っていい程生徒同士のディスカッションやプレゼンテーションがあります。これは日本ではなかなかできない経験だと思います。アトリエで作品とずっと向き合うのも大切かもしれませんが、授業ではそれを自分の時間で行ったのを前提にお互いの意見や考えを述べていきます。ディスカッションと言ってもそんなに恐ろしいものではなく、誰かが制作の悩みがあればそれに対して自分の案を言っていくなど堅苦しくなくとても身近な話題ばかりで難しいことではありません。美大の学生にはこのような経験が圧倒的に少ないと思います。しかし、これはとても重要なことだと私は思うのです。制作というのは学生でなくでも出来るかもしれません。しかし作品についての意見交換を積極的にする場というのは大学ならではだと思います。それは自身の意見をしっかりと持ち、表現するだけでなく、他人からの意見は作品を考え、見つめるきっかけにもなるのです。それは制作のヒントになることあります。
 もうひとつ、この大学の特徴は美術教育学部というところです。大学には幼稚園が隣接してあり、実際に子供たちとワークショップをするなどの美術教育の授業も取ることが出来ます。アトリエで制作をしながら美術教育を学ぶことももちろん可能です。

5、今回の展示について
 最後に今回の展示についてその経緯と結果をお話しします。今回の展示は毎年年度末に学内でおこなわれるもので、基本的には一年の成果として学生は全員参加の大規模な展示です。絵画、版画、映像、インスタレーション、彫刻と様々な範囲の作品が見られました。オープニングには多くの人が訪れ、作品についての意見をいろんな人から聞くことが出来ました。先述した様に自身の作品についての様々な反応を知ることは表現者として重要な経験になると思います。今回の展示もそのひとつでした。

6、最後に
 最近になりやっと生活と授業、制作のバランスが取れ、制作に集中する時間をとることができています。これから二つの展示が予定されています。ここでの時間を最大限に活かしていきたいです。また、滞在期間の中でドイツだけでなく、せっかくヨーロッパにいるので出来る限り多くのものを見るために他国へも積極的に訪れてみたいと思います。 現在私は日本ではなかなか出来ない経験をさせていただいています。それはここまで多くの方に助けていただいたおかげです。残りの時間を充実できるよう、がんばっていきたいです。



【関連リンク_フリードリッヒ・アレクサンダー大学】http://www.uni-erlangen.org/index.shtml
【関連リンク_朝倉優佳HP】http://yuuka-asakura.blogspot.jp/

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